8ナンバーは優遇?キャンピングカーの車検費用について

キャンピングカーコラム

8ナンバーは優遇?キャンピングカーの車検費用について


カテゴリー:
タグ:


キャンピングカーの維持費を考えたときに、気になることのひとつは車検です。普通の自動車とは違った用途のあるキャンピングカーですが、車検の内容や費用に大きな違いはあるのでしょうか?今回は、キャンピングカーの車検について知っておきたいことを包括的にご紹介します。


キャンピングカーの車検事情

大まかに言えば、キャンピングカーの車検事情は普通車と大きく変わることはなく、費用が大幅に増加することもありません。反対に、多くのキャンピングカーは税制上の優遇があり、車検時にかかる費用がお得になります。同じ排気量で比較した場合、購入費用は多少高くなるかもしれませんが、維持費に関しては意外に多くかからないのがキャンピングカーです。

もちろん、キャンピングカーのモデルや使い方によって具体的な維持費は変わります。
例えば、冬のレジャーへよく出かけるという方に必須のスタッドレスタイヤは、普通車であれば3年程度に1回の交換で良いところ、重量が重くなるキャンピングカーでは毎年の交換やタイヤのサイズアップが推奨されます。
車検時の費用が高くなることはないにしても、総合的な維持費はケースによって変わるため、購入前にはよくシミュレートすることが大切です。


車検の費用や期間を決めるナンバー

キャンピングカーは法的にキャンピングカーという区分が設定されているわけではなく、諸費用については別の分け方を考える必要があります。車検において重要となるのは、ナンバープレートの上部右側に記載されている分類番号です

ナンバープレートの分類番号は車の種類によって分けられており、例えば乗用の普通自動車の場合は3、30~39、300~399のいずれかが割り当てられ俗に「3ナンバー」と呼ばれます。同じように、主に物品を運搬する用途で使われる貨物用普通自動車は「1ナンバー」、軽の乗用自動車・小型の乗用自動車・小型の乗合自動車は「5ナンバー」「7ナンバー」、軽の貨物自動車・小型の貨物用自動車は「4ナンバー」「6ナンバー」が割り当てられています。多くのキャンピングカーに割り当てられるのは特種用途自動車に分類される「8ナンバー」です

特種用途自動車は特種な用途に使われる自動車が分類される区分で、パトカーや救急車などの緊急自動車、給水車や教習車など法令等の規定に基づいて使用される自動車、特種な用途に専ら使用される自動車が含まれます。キャンピングカーは、3つ目の「特種な用途に専ら使用される自動車」に含まれます

車検の間隔と車検にかかる費用の多くは、このナンバープレートの分類番号によって決まります。乗用車だと初回は3年後、以降は2年ごとなのに対し、貨物自動車である1ナンバーは初回2年後で以降1年ごと、軽や小型の貨物自動車である4ナンバー・6ナンバーは初回2年後で以降2年ごと、特種用途自動車である8ナンバーは初回2年後で以降2年ごとです

車検に必要な費用は主に法定点検費用、自動車重量税、自賠責保険料、検査代行手数料、印紙代などで、ナンバーによってそれぞれ費用が異なります。多くのキャンピングカーが分類される8ナンバーは自動車重量税が普通乗用車の半分程度であり、自賠責保険料は普通乗用車より少し高くなりますが、多くの場合車検の全体の費用は安くなります。なお、車検とは別で毎年納税する自動車税についても8ナンバーは優遇されています

このように、車検の回数は初回の1年の差のみで大きな違いはなく、税制上のメリットがあるため、キャンピングカーはまず8ナンバーの要件に当てはまるように製造されます。一方、税金やその他の費用では軽自動車が最も有利となるため、軽自動車をベースに作る軽キャンパーではあえて8ナンバー登録をしないことが多くあります。


特種用途自動車の要件

特種用途自動車に分類されるにはさまざまな条件があり、それらをすべてクリアすること、2年ごとの車検でもクリアし続けることが必要です。この条件はそれなりに厳しいことで知られていましたが、2022年4月に構造要件が大きく緩和されました。条件が緩和されたことでキャンピングカーを8ナンバー登録させることが容易になり、またキャンピングカー作りにも幅が広がったとされています。

構造要件が緩和された理由には、軽キャンパーを始めとした小型のキャンピングカーが充実してきたことが挙げられます。緩和前の構造要件は2003年に施行されたものでしたが、大型キャンピングカーを想定したものであり、時代にそぐわなくなっていました。そのため、小型のキャンピングカーでも8ナンバー登録ができるように、就寝定員の条件などが緩和されることになりました。

8ナンバー登録のための主な要件には、例えば以下のようなものがあります。

  • 乗車定員の3分の1以上(端数は切り捨て)の大人用就寝設備がある
  • 特定の場合を除き、就寝設備と座席は兼用しない
  • 10リットル以上のタンクと洗面台を有している
  • コンロ等により炊事が可能な炊事設備を有している
  • 着脱式の設備は走行中に移動することがないように収納または固定できる

その他細かい条件が設定されており、新規登録時、継続検査時においてチェックされます。
出典:国土交通省

2022年4月に行われた要件緩和には、例えば以下のようなものがあります。
・就寝定員について、乗車定員の3分の1以上(端数は切り上げ)が必要だったところ、切り捨てでよくなり、最低人数も2人から1人に緩和
・洗面台や炊事設備について、そのスペースの室内高は160cm以上が必要だったところ、洗面台や炊事設備の高さが85cm以下の場合であれば120cm以上に緩和

簡単に言えば、必要なベッドの数が少なくなり、必要な室内の高さが低くなったということです。特にベッドの数については、かつての要件だと乗車定員4人の軽自動車の場合に2人分が必要でしたが、新しい要件では1人分で済むことになり、8ナンバー登録のハードルが大きく下がったことが分かります。

なお、8ナンバーの要件を満たすためには10リットル以上のポリタンク、持ち運びができるカセットコンロでも問題ありませんが、使わなくなったからと車から下ろすことは違法であり、もちろん車検も通らなくなります。購入後に条件を破るような改造をすることも、違法となります


8ナンバーのキャンピングカーと乗用車の車検費用、保険費用比較

税制上のメリットなどから多くのキャンピングカーは8ナンバーの要件に合うように作られますが、具体的にどの程度の違いがあるでしょうか?

自動車重量税の比較

定期的に受ける車検では、車検費用の他、自動車重量税や自賠責保険料などを支払います。乗用車の場合は新車登録後初回は3年、以降2年ごとですが、8ナンバー車の場合は初回から2年ごとに車検を受けます。なお、税金などは車検時に2年分や3年分をまとめて支払う仕組みのため、税金の支払い回数で差が出るわけではありません
自動車重量税は、8ナンバー車のほうが大きく優遇されています。例えば、年式13年未満で車両総重量が2トンの車で比較すると、乗用車の32,800円に対し8ナンバー車は16,400円です。この金額は自動車重量税の2年分で、エコカー減税は適用していません

自賠責保険の比較

自賠責保険料は、軽自動車か普通自動車かによって比較結果が変わります
2年契約の自賠責保険料を比較すると、乗用車が25,830円であるのに対し、8ナンバーのキャンピングカーは30,210円と少し割高になります。一方軽自動車での比較だと、通常の軽自動車が25,070円であるのに対し、8ナンバーの軽キャンピングカーは15,190円と割安になります

自動車税の比較

毎年支払う自動車税は自動車のタイプによって税額が変わる他、総排気量によっても税額が変動します
1,500cc~2,000ccの総排気量の車で比較をすると、乗用車が36,000円(令和元年10月1日以後初回新規登録)もしくは39,500円(令和元年9月30日以前初回新規登録)であるのに対し、キャンピングカーであれば31,600円と割安になります。他にも、2,500cc~3,000ccであれば乗用車が50,000円(令和元年10月1日以後初回新規登録)もしくは51,000円(令和元年9月30日以前初回新規登録)のところキャンピングカーが40,800円と、やはり割安です。この税額は自動車税種別割グリーン化特例を適用していません。自動車税は、どの総排気量の車でもキャンピングカーのほうがおよそ2割安くなります

その他費用の比較

これまでの費用をまとめると、年式13年未満、車体総重量2トン、総排気量2,000ccの車で乗用車(令和元年9月30日以前初回新規登録)とキャンピングカーを比較した場合、乗用車は計98,130円でキャンピングカーは計78,210円となります。固定費だけで計算すれば19,920円の差額があり、キャンピングカーのほうが約2割安くなっているのが分かります
一方、車検の中でも検査費用やメンテナンス料金は車の状態や車検会社によって差があり、キャンピングカーは点検箇所が多く割高になる傾向にあります。また、自賠責保険をカバーする任意保険を考えるとキャンピングカーはそもそも入れないケースもあり、入れたとしてもやはり割高になります。チェックも厳しいため、任意保険に加入するための手間もある程度必要となります。このような点を考えると、税金では有利でも、キャンピングカーの維持費が特別安くなるという期待は難しいかもしれません
また、特種用途自動車(8ナンバー)として登録するための要件が緩和されたことをご紹介しましたが、現在は車全体で税制の緩和が進んできており、8ナンバー車とそれ以外で差は縮まってきています。キャンピングカーは人気が高まり所有台数も増え続けているため、維持するための条件が乗用車と近くなってきていることが伺えます


ユーザー車検か、プロの手による車検か

車検を受けようと思ったとき、ディーラーや修理工場などで行う車検とは別に、自身で手続きなどを行う「ユーザー車検」も選択肢のひとつとなります。方法やメリットに関する情報が多く出回るようになり、一般的な選択肢になりつつあるユーザー車検ですが、キャンピングカーでもユーザー車検は有用でしょうか?

キャンピングカーになる前の車を取り扱うディーラーでは難しいケースが多いものの、整備工場やキャンピングカービルダー等で行う車検であれば車を持って行くだけで点検から手続きまですべてを行ってくれます。一方、ユーザー車検では自身で運輸支局、軽自動車の場合は軽自動車整備協会の検査場へ持って行き、手続きを行います。この場合、運輸支局や軽自動車整備協会では検査のみを行うので、検査前や後の整備は自身で行う必要があります

ユーザー車検のメリットは、手数料がかからないことなどによる費用の安さ、税金や保険の知識がつくこと、自身の車に詳しくなり不調にも気づきやすくなることなどがあります。一方で、運輸支局や軽自動車整備協会に持ち込むには時間が限られており、法定24ヶ月点検はハードルが高く別途整備費用が必要となるなどのデメリットもあります。よほどの自信がなければ、プロの整備よりは精度が落ちるという点も把握しておかなければなりません。

キャンピングカーでもユーザー車検は可能です。各パーツの壊れやすさは普通の自動車と同等レベルなので、ある程度の知識があれば自身で車検を通すこともできます。
ただ、キャンピングカーは車両部分以外にも居住スペースの装備など点検のポイントが多く、8ナンバー車両としてのルールも細かいため、ユーザー車検では車検を通らない可能性が高くなります。また、重い荷物を載せて長距離移動をするキャンピングカーは安全性の確保が特に必要であり、車検を通る最低限のラインではなく、シビアなコンディションでも一定の安全性が保たれることが必要です。

以上の点を考えれば、整備の腕によほどの自信がないのであれば、キャンピングカーにおいてはディーラーや修理工場などを利用するのがおすすめです

なお、車検や法定点検、その他のメンテナンスをディーラーに依頼する場合は、車の状態や自身の使い方をしっかりディーラーに話して相談することが大切です。キャンピングカーの使い方は人によって大きく変わるため、内容によっては整備の手順を省き、費用を抑えられることもあるかもしれません。そうでなくても、なんでも話して相談することで安全や趣味のためにかけるべき費用とそうでない費用が分かってきます。


安全とコストをよく考えよう

キャンピングカーも自動車である以上、安全に走行するために車検は必須です。8ナンバーに登録できるキャンピングカーの場合や軽自動車をベースにしたキャンピングカーの場合は車検にかかる費用が優遇されるため、節約できる分は節約すべきだと言えますが、安全のためにかけるコストも必要です。キャンピングカーの購入時にはこういった維持費も考慮し、安全に楽しく乗り回しましょう。

なお、車検以外も含めたキャンピングカーの維持費については以下の記事にまとめていますので、こちらもあわせてご覧ください。

キャンピングカーの維持費はいくら?コストを踏まえて計画的に乗ろう

軽キャンピングカーは税金も安い?維持に必要なコストについて





コラム一覧へ戻る

ページのトップへ